家畜として羊を飼育し、羊の餌となる草を求めて移動しながらの生活をしている人々です。遊牧民はウールを売ることが生業でしたので、大量の羊を飼育していました。移動しながらの生活となるのは、草の生える時期が季節と場所によって変わり、一地域で放牧できる状態ではないためです。基本的に冬の時期は南側で、夏の時期は北側でテントでの生活していました。彼らは家族単位または部族単位で移動していたのです。
移動生活をする遊牧民カシュガイ族
遊牧民の織るキリムには以下のような特徴があります。
- 家庭内で使うことを目的として織り上げていたため愛情が込められている
- 材料は基本的に自然のものを利用していた(草木染)、また手で紡いだ糸を利用していた
- 女性が織っており、嫁入り道具としても使われていた
- 幅が狭く縦長である
特筆すべきはやはり販売を目的としていない点です。利益を優先する必要がないため、売らなければならないという強迫性がありません。ですから、自分達の好きなようにキリムを織ることが出来たのであり、どれもが実に個性的です。
そしてキリムに織り上げられた模様も多種多様であり、一つ一つの模様がなにをモチーフにしているのかを解明することが不可能です。逆に言うと、販売用に織られたキリムに用いられた模様はある程度のモチーフの解明はできます。なぜなら、販売用のキリムの模様にはある程度のパターンが存在するためです。
遊牧民は様々な地域を移動することができたため、それぞれの地域にある自然の原料を用いて糸を染めることが可能であったことから、バラエティーに富んだ色使いがされているのも特徴です。
自然の原料で染められたその色合いはとても味わいがあり、現在では世界各国のマニア達が血眼になって探しています、というのも現在このような本当に味のあるキリムが少なくなっているためです。多くの遊牧民が“遊牧で羊を飼う”という生活をやめ、都市に定住するようになってしまったことが一番の理由です。
その結果、遊牧民の間で受け継がれてきた母が娘に糸の染め・紡ぎ方や織り方を教え、娘が自分で織り上げたペルシア絨毯やキリムを嫁入り道具として持参するという文化も衰退してしまったのです。長年の間受け継がれてきた、このような素晴らしい伝統文化が廃れていくのは本当に残念でなりません。
最後に遊牧民のキリムが幅が狭く縦長であることについて触れたいと思います。遊牧民は移動生活をしている関係上、立派な備え付けの織り機ではなく、質素な簡易式のものを使用していました。この簡易式の織り機では幅の広いキリムを織ることができないため、どうしても幅が狭く縦長のものしか織れないのです。
のため横幅のあるキリムが必要な時は、この縦長のキリムをつなぎあわせたのです。ですから継ぎ目がなく、横幅に広いキリムはまず間違いなく、都市定住者によって織られたキリムであると言えます。

